永遠の絆 本編

 広がる森林は冷たい冬の風によりすっかり葉を落としていた。彼がかつてこの地に来たときは暖かい季節であったから、辺りの景色は生命を象徴するかのような緑に染まっていた。そのあまりにもくっきりとした変化は、あの時からの時間の経過を彼に容赦なく感じさせていた。
 白亜の城の異名を持つシーハーツの王城がある、聖王都シランドの街の南に広がるイリスの野。その外れにある小さな森にフェイト・ラインゴッドは一人立っていた。
 木々の合間にいる青い髪の少年が、気合の声と共に身体を動かしていた。
「やっ! はぁ! とぉっ!」
 ひゅんっと剣が振り下ろされ、流れるような動きでさらに一撃、二撃と剣をくり出していく。その動きはいくつもの戦いを経た熟練の剣士のそれであったが、彼の剣は虚しく空を切るばかり。というのも、ここには彼しかおらず、鍛錬という名目でひたすら素振りをしていたからであった。
 ふう……というため息と共に彼は動きをを止める。こんな事を続けていてもただの時間潰しにしかならない事を思い出したからでもあるし、また目の前に立ちはだかる現実と向き合わねばならない事を思い出したためでもある。
「はぁ……。全く、どうしてこんな事になってしまったんだ……」
 フェイトはそう呟くと、自分の髪をくしゃくしゃとかきまわす。自分の頭頂部に青い鳥の巣を形成した後、この世の終わりみたいな顔をして事の発端に思いを巡らした――。

 その日はFD人との戦いから随分と月日が過ぎた頃で、エリクール2号星にいるネルから連絡があり、フェイトをはじめあの時の仲間たちが揃ってシランドに招待されたのである。ネルからの通信によると、この国では大晦日から新年にかけて大きな祭や式典が行われ、そこに国賓として皆にも参加して欲しいという事であった。
 エリクールと地球は四季も暦もほとんど一致しており、学業に精を出す必要もない時期であったので、フェイトはエリクール行きを決断した。
 そこに向かう道中――宇宙船の船内――で、今の時期に行けばクリスマスに間に合うから、皆で聖なる夜の宴でもしよう……という事になったのだ。地球が発祥のクリスマスはその性質上、信仰とは無縁に宇宙全体の家族や恋人たち受け入れられ、今となっては地球出身者以外の者でも知っている行事となっていたのである。
 ソフィアやスフレは当たり前のように楽しみにしていたし、マリアやクリフも表情には出さなくとも歓迎している様子であった。
 そんな皆の雰囲気を感じとって、フェイトは内心ほっとしていた。クリスマスを祝おうという事を言い出したのは、他ならぬフェイト自身だったのだから……。
 彼にとってクリスマスは特別な日である。
 もちろん熱心な信仰がある訳ではない。
 それは幼い頃からの大切な約束の日。仕事で留守勝ちな両親もこの日とフェイトの誕生日は必ず家にいてくれた。家族でちょっとしたパーティをするのがラインゴッド家の慣例だった――。
 それから程なくシーハーツ王国へ到着し、ネルやクレアといった旧知の人々と再会を果たした。女王との謁見も無事に済ませたので、後は新年の式典までこれといってする事はない。
 そこでネルとアルベル、ロジャー――彼らも客人として招かれたらしい――に、クリスマスの概要を説明し、宴会を開く旨を了承させる事ができた。よもや城内で騒ぐ訳にもいかず、会場は市街地にあるファクトリーに決まった。あとは準備をする事となったのである……。
 しかし、この準備が順調にはいかなかったのだ。
 ロクに働かない者、買ってきた酒を飲み始める者、……その他諸々。だが、これらはまだマシな方である。危険性がない、という意味では。
「あ、マリアさんそれは触らないで! ケーキを作るのは私なんだから!」
 ソフィアが慌てた様子で溶き卵の入ったボールをひったくる。
「大丈夫よ、心配いらないわ。ケーキぐらい私でも作れるに決まっていてよ」
「ダメですよ〜、マリアさんの料理は伝説的な味を誇っているんですっ。フェイトお兄ちゃんだって、クリスマスはまともな食事がしたいハズです!」
 にこにこと微笑みを浮かべながらじわじわと迫るマリア。
 不動の構えでボールを守るソフィア。
「まぁ、ソフィアったら失礼なことを言ってくれるわね。ちょっとお仕置きが必要かしら?」
 ちゃきっ、とフェイズガンなどというものを取り出し、ピンポイントで狙点を定める。その動きには無駄がなく、神業的な速さである。
「ま、負けないからっ」
 こちらもいつの間にかボールを傍らに置き、杖を構えていた。神経を研ぎ澄まし、いつでも超人的な早口で呪紋を繰り出せる態勢であった。
 ――が、結局二人の視殺戦が現実へと移行する事はなかった。
 ぶんっ、と振るわれたフェイトの剣が彼女たちの視界を遮り、張りつめたような叫びが身体を凍りつかせてしまったからだ。
「何でなんだよ、ソフィアもマリアも喧嘩なんかしてさ。僕は、僕は……みんなと楽しくパーティがしたかっただけなのに!」
 ファクトリーは広いとは言えぬ空間であるが故に部屋中に声が響く。そのせいで2人の女性だけではなく、他の皆からの視線も集めてしまった。恥ずかしさと後悔で顔が朱を注したようになる。とはいえ、一瞬で素直になれる程には彼は大人ではなかった。
「……もう知らない!」
 彼はそう言い捨てて、逃げるようにファクトリーを飛び出した――。


 飛び出してみたものの、行くあてのないフェイトは足の赴くままに歩き続け、いつの間にやらイリスの野の外れまでやってきていた。
 彼のいる辺りはまばらに木々が生え、ちょっとした森ができあがっている。その中に少し開けた空間と、腰掛けるのに丁度良い倒木を見つけた。素振りをして身体を動かした後であったので軽い疲労感がある。そのまま剣を傍らに置き、自分はその自然の椅子に座った。
「戻るに戻れないよなぁ……」
 気まずさを隠すかのように、足元に落ちている枯葉をいらう。
 ネルに聞いた話によれば、内陸で山の多いアーリグリフと違い、シーハーツは平原が多く海からの風が吹く。そういった気候により、シランドの平野部には雪があまり降らない。よしんば降ったとしても、それは年が明けて冷え込みが厳しくなってからの事であるそうだ。彼が今いる場所もまさにその通りで、雪のかわりに秋から残っている落ち葉が大地を埋め尽くしていた。
 空にはどんよりとした雲が垂れこめ、吐息が白くなるくらいに冷え込んでいる。剣を動かしている間は火照っていた身体は次第に熱気を失っていく。それにつれて彼の心も冷めていったが、同時に泣きたいくらいの孤独にさいなまれる。
「こんなはずじゃ……なかったんだけどなぁ。皆で楽しく食事でもできれば、そうすれば、きっと……」
 それから先は言葉にならない。
 彼を凶弾から庇い、目の前で逝った父。
 未だ行方が知れぬままでいる母。
 己の遺伝子に刻まれた恐ろしい力の事で疑念を抱いた事もあったけれど、父も母も彼のかけがえのない家族だ。二人の事を愛する心が無くなるはずもない……。
 フェイトは我知らず拳を握り締め、祈るかのようにそっと瞑目した。
 暗い世界の中、カサリ……と落ち葉を踏みつける音がする。
 フェイトは振り向きざまに剣を突きつけようとして――、小柄な人影が視界に入ると動きを止めた。
「ヒドイな〜フェイトちゃん。アタシ、この寒い中を探しに来たんだよ」
「スフレ!? なんで……、どうしてここが判ったんだい?」
「ふふ〜ん、女の子にはヒミツがいっぱいあ・る・の」
 えっへん、とばかりに小さい胸をそらすスフレをフェイトは当惑顔で見つめた。
 そんな彼の身にふわりと柔らかな布が被せられる。冷え切った身体にはえらく暖かく感じられたそれは、フェイトの冬用コートだった。
「今日はね、この冬一番の寒さだってネルちゃんが言ってたの。だから暖かくしておかないと風邪引いちゃうゾ」
 そういう彼女も淡いピンク色のマントを身にまとっている。フェイトは握ったままの剣を地面に置き、ありがたくコートを着た。
 かすかに遠くの鳥の声が聞こえる他は、ひそとも音がしない。沈黙が二人を包む。というのも、いつもは賑やかなスフレも何とはなしに押し黙ってしまったからだ。
 普段であれば決まり悪く思ったであろう雰囲気であるが、今のフェイトにとってはあれこれと詮索をされない事は嬉しかった。
「少し座っていこうか。といっても座るのはコレだけど」
 フェイトは自分が最前まで座っていた倒木を指し示す。スフレはこくんと頷き、彼の分を空けて腰掛けた。
 並んで座った二人は灰色の雲に包まれた空を見た。見る人の心を映したのか今にも泣き出していまいそうな空である。
「この分だと雪が降るかな?」
「そうだといいなぁ。一座は気候のいいところを旅する事が多かったから雪は珍しいの。フェイトちゃんは雪って好き?」
「ん……、どうかな……」
 はっきりと答えず口をつぐんだ。今の彼は白い天からの贈りものに対して何の感情も持てなかったから……。

 どれくらいの間そうしていただろう?
 ぼんやりとしているうちに、それからそれへと過去の出来事が思い出されていく。止めようとしても堰が切れたように溢れ出てきた。
 慈しむように彼の頭をなでてくれた母の手。
 大きく力強く感じた父の背中。
 すべてのぬくもりが懐かしくて、切ないくらいに恋しい。感極まったフェイトの目に熱いものがこみ上げてきた。溜め込んだものを絞り出すかのように声をあげる。
「――会いたい、父さんにも母さんにもぉっ。ずっと昔から約束したのに。どうして……どうして、クリ、ス、クリスマスなのに一緒にいてくれないんだぁぁ――」
 側にスフレがいるのにも構わず、手を握り締め身体を震わせながら泣きむせぶ。詮の壊れた蛇口のように嗚咽おえつも涙も止まらない。どんどん溢れ出る涙で視界がぼやける。
 ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる両頬を、褐色のほっそりとした手が包み込む。
「悲しいときの涙は溜めちゃだめ。涙はこころを浄化してくれるから……」
 それはフェイトが今まで聞いた中で、一番優しい声音であった。
 スフレは慈母のごとき穏やかな表情でフェイトの正面に立ち、幼子ような表情で見つめてくるその顔を己の胸にそっと抱き寄せた。
「いいの、いいんだよ泣いて。ここにはあたししかいないけど……ううん、あたしだけだから気を張る必要なんてないんだもの」
 そう続けながら、ガラス細工でも扱うかのように優しい動作でフェイトの頭をなでる。
「マリアちゃんやソフィアちゃんと一緒にいるときみたいに、一人前の男として格好良く振舞わなくていいの。あたしはフェイトちゃんの旅の仲間――家族だから」
 普段と違い心なしか大人びた口調の囁きは、悲哀でそそけ立っていたフェイトの心にみるみる染みわたる。ひとつの言葉が雫となって心の湖に滴り落ち、波紋となって広がっていくようだ。
 フェイトはスフレの言葉を反芻はんすうする。あの戦いの終焉しゅうえんを迎えて以来、過去を振り返り、涙した事はあっただろうか? 一人でいる時は考えてしまった事もあっただろう。しかし、誰かといる時はあえて頭から追い出していたように思う。ソフィアの前では兄としての態度を貫いていたし、マリアと一緒の時は弱いところを見せまいとしていた。自分だけでなく彼女たちも不安や打撃を受けていただろうから、心配をかけないように気を使っていた。
 そうして我知らず心の中に溜め込み、ふたをして封印してしまった……。
 あの一連の出来事を共に体験した仲間たち。一人一人に対する思いは違えど苦楽を分かち合い、互いに励まし励まされしてきた。背を預ける事ができる信頼の絆で結ばれた、かけがえのない人たちである。彼らの事を家族と呼んでもいいのではないだろうか?
 その思いが頭に芽生えると、スフレが今までの人生を共に歩んできた一座の面々を、家族というのが解る気がした。それと同時に彼女が幼少の頃に実母を亡くし、父親の消息を知らずに生きている事を思い出した……。
 だから……なのか、とも思う。彼女は家族を大切にする、けれども家族のメンバーに含まれる人間は多いし、その幅も広い。一見いい加減であると考えられるが、そうでない事を今のフェイトなら理解ができる。家族などというものは作ったもの勝ちなのかもしれない。少し不謹慎な結論かもしれない。けれども不思議と家族という言葉がとても神聖なものに感じられた――。
 フェイトは面を上げ、スフレと正面から向き合う。
「ありがとう、スフレ。君のおかげで僕は大切なもの取り戻す事ができた。スフレが僕の事を家族と言ってくれたように、僕もスフレの事を家族だと思う」
「えへへ、どういたしまして。フェイトちゃんが元気になってくれてアタシも嬉しいなっ」
 普段の口調に戻ったスフレがにこりと微笑む。彼女はいつも他人を元気付けるような笑みを絶やさない。その笑顔がどれだけ支えになったか、改めて実感させられた。
「そろそろファクトリーに戻ろうか。でも黙って飛び出してきてしまったからなぁ……。少し気恥ずかしいんだよな」
「だ〜いじょうぶ! フェイトちゃんとマリアちゃんはケンカした後に仲直りするでしょ? それと一緒だよぉ」
 それとなく鋭さを含んだ言葉に、苦笑しながらフェイトは頷く。
「今なら……、スフレと一緒になら素直に帰れそうな気がするよ」


 もう夕刻に近くなってきたのだろうか、辺りは薄暗くなってきている。 早く皆の所に帰ろうと思い歩き始めると、シランドの方からやってくる複数の人影が見えた。 それに気が付いたフェイトの口元がほころぶ。朗らかな表情を浮かべ、そちらに向かって大きく手を振った。
「フェイト――!」
「フェイトお兄ちゃ――ん」
 マリアとソフィアが彼のもとに走り寄ってきた。残りの面々――全員できてくれたらしい――はゆっくりと歩いて後に続いている。
 彼女たちは互いに頷きあい、改めてフェイトの方に向き直る。
「「ごめんなさい」」
 二人は揃えて頭を下げる。
「私たち、はしゃぎ過ぎてしまったわ……」
「わたし……、お兄ちゃんにとってクリスマスが特別な日だって知っていたのにね」
 しゅんとうなだれる二人を眼前にして、フェイトも慌てて謝る。
「僕の方こそごめん。二人とも張り切って準備をしてくれたのに、僕が癇癪かんしゃくを起こしてしまった。……皆にも本当にごめんっ」
 追いついてきたクリフ、ネル、ロジャー、アルベル、一人一人の顔に目を遣る。
「なぁに、気にするなって事だ。おかげ様というか何というか……アレからオレ達は準備に身を入れてやったからな。結果オーライだ」
 クリフはバツの悪い表情をしながら、フェイトの頭にぽんと手を載せる。 普段なら子ども扱いするなよ……と思ったところであるが、今日はそれが無性に暖かく感じられた。
 そんなフェイトの感慨はそっちのけで、クリフは疑問を口にする。
「それにしても……スフレのやつはどうしてここが判ったんだ? 確信めいた表情でコートを持って出て行ったんだが……」
「へへへ、女の子にはヒミツがいっぱいあるんだよ〜」
 イタズラ好きの子供ような表情でスフレが答える。
「なんだそりゃ? おい、ちっとも答えになってないぞ」
「マッチョなオトコにはオトメの不思議は解んなくて当然だね〜っ」
 からかうような物言いに、クリフの顔が一瞬で赤くなる。この男、案外子どもっぽいところがあるのだ。
「こら、待て。逃げんな!」
 スフレとクリフの追いかけっこが始まった。長身のクリフが走る姿と対照的に、くるくると身軽な動作で駆け回るその姿は、幻惑の妖精の名にふさわしい。
 2人の追いかけっこに引きずられるようにして、彼らは8人揃って帰途についた。

 イリスの野を歩く彼らの視界に、白いものが舞い落ちてきた。
「あ……雪が……」
 誰ともなく足を止め、空を眺める。純白の綿のようなそれは、最初の一つを皮切りに次から次へと降ってくる。
「この冬は雪が降るのが早いね。あんたたちが言う聖夜に風情がでるよう、天空の神々が祝福してくださったのかもしれないよ」
「雪が積もったらアーリグリフへの帰還が面倒だ。クソ虫め」
 突然の降雪にネルとアルベルがそれぞれの感想をもらす。
「こう冷え込むとマフラーが欲しくなるね」
 ソフィアの何気ないひと言に、ロジャーを除く全員が彼のしっぽを見つめる。
「……大事なしっぽをちょん切ろうというんじゃないよなっ」
 ふさふさの尾を庇いながら、ロジャーはジト目で皆を睨んだ。
「あはは、大丈夫だって。ちょっと暖かそうだなぁって思っただけだよ」
 クスクスと笑いながらフェイトが答えると、そうそう、と皆が頷く。
「……バカちん」
 ほっぺたを膨らまして、ぷいっと顔そらす仕種がますます可愛らしい。もっとも本人は可愛いなどと言われると怒るので、この事は各自の胸に閉まっておいた。
 和やかな雰囲気に包まれて一行が再び歩き始めると、スフレがフェイトの隣やってきた。
「あのね、フェイトちゃん。あたし、シランドに滞在している間は一座のみんなと離れているけれど、ネルちゃんたちからのご招待が終わったらみんなのトコに帰るんだ」
 突然何を言い出すのだろうと当惑していると、彼女はさらに続ける。
「今は一座と離れたトコにいて、その後はフェイトちゃんたちと離れて過ごすの」
 いつになく真剣な面持ちでぽつりぽつりと喋るのを聞いていると、彼女がいなくなる事に寂しさを覚えた。せっかく大切な家族の存在を自覚できたのに、それが儚く消えてしまいそうな錯覚におちいる。
 スフレはフェイトの動揺を感じとったのか、安心させるかのように曇りない優しい瞳を彼に向ける。彼女は背伸びをして顔を寄せてくると、フェイトにそっとささやいた。
「忘れないで……フェイトちゃん。遠くに離れ離れになっていても、お互いを求める気持ちがあれば再会できるんだから。信じよう、家族の絆は永遠だって。決して絶ゆることはないって、あたしは思ってる。だから一人なることも……また会うこともできるの」
 しんしんと降りしきる雪の中で聴いた言葉は、雪と違い溶けて消える事はなく、フェイトの心の中にいつまでも残された――。

 この聖なる夜、初めてフェイトは祈った。
 あの戦いの日以来、期待が虚しく消える事を恐れて、夢を持つという事を止めてしまっていた。 けれどもスフレが不確かなものを信じる心を覚醒させてくれた。そんな自分の変化に驚きつつも、素直にその自分を受け入れる。
 かたわらにいる大切な家族たちの幸せと、この関係がいつまでも続く事を願った。 それと、母が何処かで生きているであろうという事と、いつか必ず再会できるという事を。
 家族の絆は永遠、今はこの言葉を支えにして、ひたすら信じて行動してみようと思った。 ただ待つのではなく、自分から探しに行けばいい。今日は一年に一度のクリスマスの夜だもの、想いはきっと届く。
 この雪が分け隔てなく降るように、自分の祈りも世界中に届いて欲しい……。
 フェイトの願いが聞こえたのか、すべてを包み込むかのような勢いで雪は降り続けた――。



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