始まりの合図は流星雨

 その時、フェイト・ラインゴットはとてつもない窮地に立たされていた。 この危機から逃れる術もないわけではなかったが、彼女の悲しむ顔は見たくない……というのが彼の本心であった。 その想いが彼の首をぎゅうぎゅうと締め続ける事も知らずに……。
 そう、あれは「宇宙の存亡をかけた出来事」から数ヶ月後のこと――。

 地球にあるフェイトの家。そのダイニングで彼は自身の青髪よりも顔色を青に染めていた。 スプーンを持つ手はカクカクと震え、冷や汗が滴り落ちる。
 原因は彼の眼前に鎮座している料理の盛られた皿である。 野菜スープだと言われて出されたモノであるから、材料は野菜であるはずなのだが、とてもじゃないがそうは見えない。
 形状はどろっとしたドドメ色で、ボコボコと気泡が発している。 隣に置いてあるグラスに入った水が、えらく清浄なものに思える。
 ツーンとした臭いがしていて、湯気が目にしみるのは何故だろう……。一瞬遠のきかけた意識で彼は考えた。
 この料理――とは思えない何か――を作ったのはマリア・トレイター。 クォークという組織の指導者を勤めていた女性である。 彼女はフェイトと同じ色の髪を手櫛で梳かしながら、向かい合うように席に腰掛け、実に満足げな様子である。 その表情からは、自分の作成物に対する疑念はカケラ程も持っていないというのがよく判った。
「どうかしら……? 初めて作ってみたのだけれど、美味しい?」
「ま、まだ食べてないからっ。……ところで、これは味見したのかい?」
「いいえ、してないわ。フェイトが美味しく食べられれば、他の人の口に合わなくても私は満足よ」
 フェイトは「いや、そういう意味じゃないんだけど……」というのはかろうじて口の中に留めた。 言うだけムダ、そんな気がした……。
「さぁ早く食べてみて頂戴」
 にこやかに死刑宣告をしてくる彼女に、ひきっつた笑みで応える。
「それじゃぁ…い、いただきます」
 どろりとした物体をスプーンですくい、緩慢な動作で口へと運ぶ。 それが顔に近づくにつれ強烈になる臭いに、今にも失神しそうだ。
 そして、フェイトはそれを口に流し込んだ――。
「なッ、不味――ッ!!」
 素直に感想とスープを吐き出してしまった彼に罪はない、大抵のものはそう考えるであろう。 しかし、フェイトの前にいる女神さまは許してはくれなかった。即座に断罪の剣を振り下ろす。
「なんですってぇ――! 私の料理が不味いっていうのォォォ!」
 テーブルの上に身を乗り出し、フェイトの襟首を掴んでガックンガックンと揺さぶる。挙句に懐からフェイズガンを取り出す始末。
「エイミング・デ……」
「その前に自分で味見してくれ――ッ!!」
 宇宙で最速とでも言うべき速さで、フェイトは皿の中身をすくいマリアの口に放り込んだ。
 するとどうだろう、マリアの顔色はみるみる青ざめ怒りの炎はすぐさま鎮火した。
「――――ウッ! な、何これぇ……。フェイト、貴方よく平気だったわね」
 彼女の作ってくれたものだから耐えられたようなものである。 作ったのが他の人物なら、逃げるか倒れるかしていたはずだ。 現実を認識したことで彼女の様子が落ち着いたようなので、フェイトはやっとこさ安心した。
「フェイト……ごめんなさい。無理して口にしてくれたのよね……」
 しゅんとした姿がいじらしい。彼女は自分の振る舞いが悪い、そう気が付けばどんなに格好悪くても頭を下げる。 マリアの中の良い部分だと、フェイトは思っている。……もっとも、気が付かない時は手に負えなかったりもするのだけれど。それは内緒である。
「まぁ、そんなに気にするなよ。僕だってそんなに料理が得意というわけじゃないしさ」
「ダメ、ダメなのよっ。フェイトに美味しい御飯を食べさせてあげられなくちゃ……!」
 マリアの胸中に栗色の髪の少女の面影がよぎる。自分という存在が現れるまで彼の側にいつもいた少女の顔――。
 最終的に彼の心を捕らえたのは自分だった。 「お兄ちゃんのコト、お願いね」泣くとも笑うともつかない表情で、彼女はマリアに小さな声でそう言ったのだ。 それは別離を決意した彼女の想いの表れ。それ以来、彼女はフェイトの事を「お兄ちゃん」と呼ぶようになった。
 ぶんぶんと頭を振り、過去の回想を断ち切る。その瞳には決意の表情がなみなみと溢れていた。
 心配そうにこちらを伺っているフェイトの頬を両手でそっと包み込む。じっと彼の瞳を見つめて、マリアは高らかに宣言する。
「フェイト、私ちょっと料理修行の旅に出てくるわ。美味しいものが作れるようになったら連絡するから、それまで待ってて!」
 フェイトの唇に自分のそれを重ね、別れを惜しむ心を強引に振り払い颯爽と部屋から飛び出した。
 後には呆然とした顔のフェイトが取り残された。 あまりにも呆然としているものだから、外から屋内の様子を覗いているマッチョな影には気付かなかった。 その影が、ニヤリとほくそえんでいる事にも……。


 エリクール2号星と分類されている星がある。もっとも、その地に暮らす大半の人間は、そんな事を気にもかけていない。 幾つかの国があり、それが世界の全てであると認識しているからである。
 聖王国シーハーツと呼ばれる国の首都シランド。そこには王都の名前と同名の麗しき白亜の城がそびえている。 街は活気があり賑やかな様子だが、さすがに城内は静けさに包まれている。
 ……本来であれば。
 青い髪の女性によって、荘厳な城の雰囲気は跡形もなく粉砕されていた――。
 突然の来客にネル・ゼルファーは冷静さを保ちつつも、すっかり相手に気圧されていた。
 ネルの個室で彼女と相対しているのはマリア。 普段のクールな雰囲気はどこへ行ったものか、暑苦しいまでの熱気が彼女を取り巻いていた。 それほどまでに切実な状況をネルに訴えているのだ。
 フェイトのために美味しい料理を作りたい。旅の途中でネルが器用に料理を作っているのを見ていた、だから教えて欲しいと。
 止まらない言葉、溢れ出る熱意。真剣そのもの。
 ――はっきりいって怖い。迫力がありすぎる。
 鬼気迫るとはこの事か……とネルは思った。 それと同時にはるか遠くにいるフェイトに向けて、胸中でたっぷりと恨みごとを送りつけた。
(大切な人はしっかり捕まえておきな! 今のマリアはあの戦いの敵よりもタチが悪いよ!  それにマリアと料理は相性が最悪じゃないかっ!)
 どうせなら言葉だけでなく、裏桜花炸光でもお見舞いしてザクザクと切り刻んでやりたいところである。
 はっきり言ってこの状況から脱出したいネルは、不退転の意思がありありと溢れているマリアを他所に押し付けようと試みた。
「ねぇ、マリア。私は聖王国に仕える身なんだ。戦争はしていないとはいえ仕事は山のようにある。 悪いけど……協力できないよ。それに料理ならソフィアの方が得意だろう?」
 現在、ソフィアは学校の長期休暇を利用してシランドに滞在している。 そしてシーハート27世の要望に応じて、紋章術の研究を行っている。 ちなみにその内容は、紋章術を普通の品物に付与する事についてである。 施術という形で紋章術を行使してきたシーハーツにとって、彼女の研究はとても役立つであろう、という女王の考えである。
 ソフィアがここにいるのは地球に居づらいというか、某カップルを見ていたくないというのが主な理由だったりする。 そんなマリアとソフィアとの関係について、ネルも知らないワケではないがこの際である。 危険な嵐にはさっさと過ぎ去ってもらいたいのだ。
 あれこれ思い悩んでいるネルの態度には、全く気付いておらぬといった様子でマリアはクリティカルな一撃を放った。
「仕事のことなら心配いらないわ。女王様の許可は頂いているから」
 1枚の紙をちらつかせて、にこやかに告げるマリア。
 ――ネル、絶句。
 女王の判断に疑念など抱いた事は一度たりとてない。だがこの瞬間ばかりはそうはいかなかった。 今すぐにでも陛下の前に行って事の次第を問い詰めたい。 しかし、マリアの手許にある書状には聖印――勅命の印――が確かに捺してある。 小さな印がある、ただそれだけなのに職務熱心なネルは逆らう事ができなかった……。
 半ば死人の態であるネルの手をしっかりと握り――逃がさないという意思の現われかもしれない――さらに続ける。
「これからしばらくの間、あなたは私の貸切ってワケよ。よろしくね、ネル先生」
「は、はははっ……。しっかり鍛えてあげるから覚悟するんだね……」
 もう逃げられない。いや、もとより逃げ道なんてなかったのかもしれない。 マリアのあまりの周到さに、彼女がヤル時は殺る……じゃなくて「やる」性格である事を、改めて認識したネルであった。

 ――それから約10日の間、シランドの街のファクトリーには「立ち入り禁止!」の張り紙が張られ、 連日のようにアヤシゲな音が近隣に鳴り響き、時には異臭がたちこめた。路傍の草花は枯れ、鳥は空から落下したらしい……。
 シランドの住人は後になってひどい騒ぎが発生しようとも、あの時に比べればマシなもの、と言うようになったとか――。


 フェイトはマリアが姿を消して以来、毎日を鬱々と過ごしていた。
 その日もソファに一人で腰掛けて、いつものようにぼんやりとしている。部屋には見ていないテレビの音声が無意味に流れていた。
 そこにひょっこりと現れ、おもむろにフェイトの顔を覗き込む金髪のマッチョボディ。
「うわッ、金髪マッチョ!」
「……おい」
「――あ、クリフか。ビックリしたなぁ」
 ふう、と安堵の一息をつくフェイト。
 チラリと殺意が浮かばないでもなかったが、別に考えるところがあるらしく最前のやり取りはなかった事にして、 クリフは用意してきたセリフを放った。
「よう、フェイト。シケたツラしてんなぁ……。やっぱアレかい、マリアに逃げられちま――」
 ガッ!
 フェイトの蹴りとクリフの腕が交差する。
 タチの悪いニヤニヤ笑いを浮かべたクリフと、いささか危険な目つきをしたフェイト。このままさらに喧嘩は続くかと思われたが、そうはならなかった。フェイトがどうでもいいと言いたげな表情をして、ソファに座り込んでしまったからだ。
(こりゃあ、そうとう重症みたいだな……。しかしアイツからの連絡だと、そろそろこっちにも……)
 クリフが意味深な事を考えていると、待ってましたと言わんばかりのタイミングで、部屋の中で電子音がピピピと鳴った。

「めっせーじヲ1件受信シマシタ」

 部屋の片隅に置かれている端末から、無機質な音声が流れる。
「フェイト、メールが着てるぞ。見ないんなら勝手に読むぞ」
「おい、クリフ。他人のメールを……」
 クリフはフェイトの制止を黙殺して、さも楽しそうな顔つきでメールを開いた。

――修行が終わったわ。エリクール2号星のシランドにいるから、こっちに来てくれるかしら。腕前を披露するのが楽しみよ――

「ほほう、良かったなフェイト。愛しいマリアからだぞ」
「……ったく。他人のメールを勝手に読むなよな。プライバシーの侵害だよ」
 口では文句を言っているが、顔は緩みっぱなしである。へら〜っとしていて、一歩間違えればヤバい薬でおかしくなった人みたいである。
「よしっ! ちょっくらエリクールまで行くとするか。俺が地球に来るのに使った船があるから、それで行こうぜ」
「……え、いいのかい? 地球からだと燃料代も結構なものになると思うんだけど……」
「気にするなって。他ならぬフェイトのためだしな」
「……ありがとう、クリフ」
「よーし、そうと決まりゃあまずは荷造りだ」
 フェイトはさっそく荷造りにとりかかった。衣類や貴重品、食料。それに武器。 武器なんてものを持ち歩くのは、エリクール2号星には野生のモンスターがいるからだ。
 マリア恋しの一心で、いそいそと荷造りをするフェイト。愛しいと思う心はとてもピュアなものだが、 彼の眼はその想いで曇っていたかもしれない。 部屋の隅でコッソリと端末を使い、どこかへ向けてメールを送るクリフの行動を見咎めなかったのだから。 「恋は盲目」とはよく言ったものである――。

 地球から遠く離れた某所。
 薄暗い部屋には一人の女性がいる。
 その女性はモニターに映し出された文章を読んで、嬉しくなる想いを抑えることはできない。 嬉しく思ってはいけないと解ってはいるのだが、理性と感情は別のものだ。
 ――久しぶりにあの人に会える。だからこそ彼の思いついた茶番に付き合い、その準備に奔走する事を厭わなかった。
 便宜を図ってもらう代わりに受けた仕事のせいで、疲労が溜まっている。しかし、やつれた顔なんて見られたくない。 とびきりの笑顔で会いに行くのだ。そのためには手早く仕事を済ませて、ゆっくり休養を取らなくては。
 そう決心した彼女は、意気揚揚と仕事と向き合った。 

 かくして時はあっという間に流れ、再開の日がやってきた――。


 シランドの南にあるイリスの野、その外れに小型の宇宙船がひっそりと着陸した。 現在は夜も半ばといった時間帯であるから誰かに見つかるという心配もないだろう。 とはいえ、このまま放置しておくのはあまりにも無神経であろうから偽装モードにしておく。 スイッチを押すだけで周囲の景色に同化してくれるのだから、全くもって便利な代物である。
 そうしてフェイトとクリフは、数ヶ月ぶりにエリクールの大地を踏んだ。 地球と違って緑の匂いが大気に満ちている。風が木々を揺らし、かすかに野生の獣達の声が聞こえてきた。
「久しぶりだな、ここに来るのは……。もう少しでマリアに会えるんだ」
「おう、そうだな。それではシランドの街へと、さっさと行くとしますか」
 フェイトは頷きを返し、二人は夜のイリスの野へと歩き出した。
 街へ着くまで、何度かモンスターの類と遭遇したが、今の彼らの強さでは何の問題にもならなかった。 容赦なくモンスターをぶちのめし、セフティジュエルや錬金素材を拾った。 これを売り飛ばせば宿代が浮くだの何だのとのんきな事を言いながら、彼らは街へとたどり着いた。

 朝の開門の時間まで待ち――夜は門が開かない――ようやくシランドに入った。
 朝とはいえ、仕事熱心なシランドの人々でメインストリートは既に賑わっている。 そんな朝の喧騒の中から栗色の髪揺らしながら、小柄な影がぴょこんと現れた。
「お兄ちゃん! ひさしぶりね」
「ソ、ソフィア!? 久しぶりだな……でも、どうしてここに?」
「マリアさんのとこに連れて行くのよ。それともわたしの案内じゃ不安なのぉ?」
「い、いや、決してそうい……」
 久しぶりに会う妹ように思う少女の雰囲気にのまれ、 すっかりタジタジとなったフェイトは拉致されるかのように強引にシランド城内に連れ込まれた。 何が何だかさっぱり解らないフェイトはクリフとソフィアが意味ありげに目線を交わしている事にちっとも気がつかない。

 城内の一室ではマリアと、何故かやつれたネルが待っていた。
「フェイト!」
「マリア!」
「さぁ、これからネルに鍛えてもらった腕前を披露するわ! しばらく待ってて頂戴!!」
「――――え?」
 そういうと、マリアは続き部屋になっているキッチンへと姿を消す。
 感動的な再開の抱擁を期待していたフェイトは肩透かしを受けた。 がっくりとうなだれるフェイトを見るクリフ達はすごく楽しそうである。世の中ってそんなものだ。
 台所から聞こえてくる音、漂う美味しそうな匂い。
 マリアは本当に腕を上げたのか? 一同の視線は師匠役のネルに集まる。
「ネルさん、マリアさんは本当に上達したんですか?」
「ああ。匂いで判るだろうけどカレーを教えたんだ。子供でもそこそこ美味しく作れるからね」
「あ……そうですね!」
 ソフィアとネルの会話に安堵するフェイト。
「よかったなフェイト。これでマリアの不味いメシとはオサラバだぜ」
「……うん。どうしよう……すっごく嬉しい」
「苦労のした甲斐があるってもんだ」
「クリフは何もしてないだろ」
「……そうだったな」

「みんな〜、できたわよ〜」
 皿に盛り付けた人数分のカレーを持ってきたマリア。各自の前に皿を配っていく。
 一同の前に並んだカレーは見た目、匂いともに問題なさそうである。
「それでは皆さま、どうぞお召し上がりください」
 かしこまった口調でマリアが言った。
「「「「いただきまーす」」」」
 恐る恐る口に運ぶフェイト達。
 ――――ぱくっ。
「あ、美味い」
「本当。おいしいですよ、マリアさん」
「教えた苦労が報われるってモンだね」
 クリフは特に感想をもらさなかったが、表情ときれいに平らげられた皿を見る限りでは問題ないようだ。
 ネルは独り考えた。
 すっかりラブラブモードに入ったフェイト達は放っておくとして、 自分に苦労をかけさせた連中にはその分の負債を払ってもらはなくては……。 部下のファリン達に裏は取ってもらっていたのでネルは今回の出来事の全体像を全て把握していた。
 ネルは自然な微笑み――部下曰く最凶の微笑み――を浮かべて死刑者リストを読み上げた。
「クリフ! ソフィア! ちょっと顔貸しなッ」 

 シランドの街の外、夕暮れ時のイリスの野。そこには珍妙な表情のネルがいた。
「はぁ!? クリフはそんな理由で今回の事を目論んだっていうのかい?」
 クリフ曰く、マリアは料理の実験台としてクリフを選んでいたらしい。 確かにちょっとやそっとでは死ななそうね……などとネルは思ったが、何せあのマリアの料理である。 本当に死人がでるかもしれない。
 この窮地を乗り切るためには、根本的な解決策が必要だと悟ったクリフ。 愛しいフェイトに不味いと言わせれば、さすがのマリアも思い直すハズ。そこでフェイトに料理を食べさせるように仕向けたのだ。
 後は簡単、マリアの性格からしてソフィアに教えを請う事はありえない。 エリクールには知り合いが少ないから、修行の事が他人にバレる事がない。ネルを選ぶに間違いない。
 周到なマリアは先にネルの休暇を申請するだろうから、それがとりやすくなるようにソフィアが根回しをした訳である。
「まったく、アンタ達は……。呆れて何も言えやしないよ」
「ごめんなさいネルさん」
 クリフはともかく、ソフィアに素直に謝られては許してやるしかなさそうだ。「もういいよ」と言ってあげようとしたその時。
「……それにしてもぉぉ、お兄ちゃんってばデレデレしちゃってぇぇぇ!」
「……ソフィア?」
「もう、大っキライだよォ。メテオスォ―――ム!!」 

 一方、ラブラブなフェイトとマリア。夕日に赤く染まるシランドの景色を満喫していた。
「フェイト、これからは安心してね。美味しい御飯を毎日作ってあげるわ」
「ああ、楽しみにしているよ」
 予想外に美味しかったカレーに満足していたフェイトは微笑んだ。
「あ、そうそう! デザートも作ってみたのよ」
 そういってマリアが取り出したのはプルプルしている変な塊。どこかで経験した憶えがある刺激臭がする……。 フェイトはすっかり血の気を失った顔で問うた。
「こ、これもネルさんに習ったのかい?」
「いいえ、創作オリジナルよ。あなたのために作ったの」
「はい、味見」
 フェイトは素晴らしいスプーン捌きで、マリアの口に変な塊を放り込んだ。
「な、何コレ――ッ! 不味いわ!」
 カレーは上手く作れるようになったものの、他の料理はさっぱりらしい。
 奇しくも二人が眺める空に流星雨が現れた。古い言い伝えでは流れ星は吉凶両方を象徴するという。 彼らの未来は如何なものなのか――?
 フェイトの受難とマリアの挑戦、二人の戦いはまだ始まったばかりのようである。


− Fin −



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