■ ルナルの歴史 ■

ここでは世界の始まりから、現代までの流れを解説していきます。
多少、面白おかしく書いてありますがお気になさらず……。

◆ 白き月の時代 〜世界の創造〜
 後にルナルの大地が出来上がる空間には何もなく、〈源初の創造神〉の御座所である白き月があるだけでした。 この〈創造神〉はどうやって誕生したのか、或いは何処からやってきたのかは判っていません。 なんとも胡散臭い話ですが、〈創造神〉がとてつもない力を持っていた事は確かです。 そんな彼にも悩みがありました。それはこの世界に1人きりであるという寂しさ。 この孤独を解消するべく、〈創造神〉は己の超パワーを使い、自分の友となれるような対等な存在がいるらしい事をつきとめました。 ただ、そこへと至るのは彼の力をもってしても容易ではありません。そこで自分の手助けをしてくれそうな者たちを生み出したのです。

 まずは純粋なエネルギー体で意志を持たぬ〈天使〉を造りました。 目的達成のために都合の良い存在です。さすがは〈創造神〉と言ったところでしょうか。 〈天使〉たちは現実の在り様を変化させる方法を知っており、〈創造神〉はその力を使ってルナルの大地と、そこに住まう動物と植物を造り、ルナルの大地にばらまきました。
 そして多くの生き物の最終形態として〈源人〉と〈龍〉を造りました。 〈源人〉は後の時代の知恵ある生き物のルーツとなる存在で、様々な環境に合わせて己の姿を変貌させる力を持っていました。 〈龍〉はありとあらゆる生き物たちの中で、最強の力を持っていました。
 こうして出揃った3者とともに、〈創造神〉の手によってルナルの大地には偉大なる古代帝国が作られました。 この国がどんなものであったのか、神話の中で語られるのみで、はっきりとした事は伝わっていません。 ただ、争いも災害もない平和な楽園であった、と言われているのみです。 「帝国」と呼ばれる以上、皇帝がいたのでしょうか?  誰がどのような統治をしていたのか、〈創造神〉が如何なる関与をしていたのか……まさに「神のみぞ知る」です。 もっとも、〈創造神〉が密かにニヤリとほくそ笑んでいたのは確かでしょう。彼の願いが成就しつつあったのですからね。

 さて、始まりがあれば終わりがあるのは世の必定のようで、この楽園にも終焉がやってきました。 それは〈創造神〉の旅立ちです。彼は大いなる儀式を行い――おそらく、この儀式にルナルの生き物たちの力が必要だったのでしょう――白き月の中心を抜き出しました。 白き月の中心は〈創造神〉の求める友、すなわち〈偉大なるものたち〉のいる地への扉となりました。 これが現在のルナルの大地を照らす太陽です。
 〈創造神〉は最も優れた〈天使〉〈源人〉〈龍〉を連れて、扉の向こうへと旅立ちました。ええ、それはあっさりと。 強すぎる太陽の光に耐えられず、旅立ちに同行できなかった者たちは置いてきぼりです。 利用するだけ利用しておいて、いざ旅立ちとなったらフォローもしてくれないなんて、まったく酷い話です。 もっとも、いつか迎えをよこす、もっと成長したら追いついてこい、といった言葉を残したという説もありますが。
 さて、ルナルに残された者たちはどうなるのでしょうか……。

◆ 輪の月・彷徨いの月の時代 〜残された者たちの行く末〜
 〈源初の創造神〉が旅立った後のルナルの有り様は惨憺たるものでした。 〈創造神〉のコントロールを失った太陽の力が、ルナルの大地を破壊しまくったのです。 栄えていた古代帝国もことごとく失われました。 置いてきぼりな上に、ここまでエラい目に会うとはルナルの生き物たちも哀れなものです。

 さて、大地から空へと視点を移してみましょう。こちらでも大きな変化がありますから。 1つは輪の月の誕生です(正確に言うと太陽が誕生した時点で存在していたのですが)。 この月は、白き月から中心をくり抜いて太陽を造った時の残りの部分です。だから形が輪状なんですね。 輪の月は天空の頂点に座し、昼夜を問わず常にルナルの大地を照らしています。
 もう1つの変化は、彷徨いの月の誕生です。この月は太陽が誕生する際にはじきだされた月のかけらより発生しました。 様々な色を持っている事から、万色なる彷徨いの月とも呼ばれます。 彷徨いの月は動きの予測がつかず、気紛れで不思議に満ちた月でもありました。

 今度は残された生き物たちに目を向けてみましょう。
 〈天使〉たちは輪の月に住まい、命令してくれる者が現れるのを待ち続ける事にしました。
 〈源人〉たちはその力――変貌する力や魔法――のほとんどを忘れてしまいました。 そして次第に人間、エルファ、ドワーフといった種族に細分化していきました。すなわち〈源人の子ら〉の誕生です。 この変化には彷徨いの月のどの色に心惹かれていたのかが影響したようで、その後、彼らは彷徨いの月を信仰するようになっていきました。
 〈龍〉たちは深い深い眠りにつきました。いつの日か、〈源初の創造神〉の迎えがくる事を待ちながら……。

◆ 銀の月の時代 〜異貌の神々と龍たちの戦い〜
 〈源初の創造神〉の旅立ち後のドタバタが何とか落ち着いてきたルナルの大地に、星辰の彼方からひょっこりやってきた存在があります。 それが銀の月です。銀の月には神の名にふさわしい強大な力を有するものから、それより劣る存在の無数の小神まで、たくさんのものたちが存在していました。 銀の月の神々は外見もその理論も、ルナルの住民たちには理解し難いもので、〈異貌の神〉と呼ばれるようになりました。 ルナルにやってきた彼らは、太陽の力を求めていました。銀の月はそのために虚空を旅する船なのだとも言われています。

 ではここで銀の月の神々がどのようなものであったか説明しておきましょう。
 ひと言でいいますと、彼らは非常に仲が悪いです。 彼らは互いに派閥を作り、覇権を競い合っていたのですよ。 しかもタチの悪い事に、同じ派閥の中でも全員が仲が良いという訳ではありません。 そもそも、銀の月の神々は「地」「水」「火」「風」の4つの元素を司る者たちで、それぞれの元素ごとの派閥に分かれていました。 そして銀の月の中で1番は俺たちじゃい、とばかりに争っていたのです。
 そんな彼らですが、地を司る者たちは地の元素界という異界に親しく、水を司る者たちは水の元素界に……というように、 それぞれの属性の元素界と密接な関わりをもっていました。それ故に彼らは〈元素神〉とも呼ばれています。

 ケンカに明け暮れていたとは言え、彼らの力は凄まじいものでした。 ルナルの大地に暮らす〈源人の子ら〉の中から、その力にすっかり魅了されてしまった者たちがでてきたのです。 水の元素神を信仰した者たちは〈姿なきグルグドゥ〉に、火の元素神を信仰した者たちは〈爬虫人〉へと変貌していきました。 これが現代で知られる銀の月の種族の始まりです。 人間、姿が変わると中身まで変わってしまうものなのでしょうか。 銀の月を信仰する者たちは、その異質な文化にどんどこハマっていきました。 そして他種族には理解し難いものの、壮麗な文明を繁栄させていったのです。

 このまま銀の月の勢力がルナルに広まるのか……と思いきや、そうはなりませんでした。 自分たちが眠りについてる間に、異郷の力が世界を揺らめかせているのに気が付いた連中がいたのです。 それは眠れる〈龍〉たちでした。 〈龍〉も〈異貌の神〉と同様に自分が一番というポリシーを持っていたので、他所モンが勢力を拡大しているのが気に入りません。 そこで、舐めんなゴルァァァ、とばかりに〈異貌の神々〉と〈龍〉たちの戦いが始まりました。
 他のルナルの生き物にしてみれば非常に迷惑な話です。何せ双方ともに凄まじい力の持ち主です。 流れ弾の1つで町が壊滅状態になる、なんて事は容易に想像できますよね?  という訳で、2者が争ったばっかりに、再びルナルの大地は滅茶苦茶に破壊されてしまったのでした。

 戦いそのものがどういう結果になったかと言いますと、これは傷み分けに終わりました。 さんざん破壊しつくして、そーいうオチかいッ! と言いたくなりますね。まったく困ったものです。
 えー、それで〈龍〉と〈異貌の神〉がどうなったかと言いますと、彼らは互いに封印しあい、深い眠りにつきました。 〈異貌の神〉たちは銀の月や深い大地の底、あるいは暗く静かな海底で。〈龍〉たちは意志を失い石化した身体になって天空で。 石化した〈龍〉の肉体は〈天空の龍の島〉となり、一定の軌道にそってルナルの大地の上を巡っています。 その雄大な姿は一部の〈源人の子ら〉の憧れの対象となりました。
 こうして深く傷ついた世界が癒えるには、新たな月の登場を待たねばなりませんでした……。

◆ 緑の月の時代 〜静けさに包まれた世界〜
 ルナルの大地は〈異貌の神〉と〈龍〉の戦いにより、すっかりボロボロになってしまいました。 その地に住む多くの生き物たちは傷ついた世界が回復するまで、ひっそりと暮らしていました。
 そんな折に1つの変化がやってきました。ルナルの近くに流れてきた星のかけらがやってきたのです。 その星のかけらは植物と、それに親しく生活していた〈源人の子ら〉に豊かな生命力をもたらしたのです。

 突然その恵みを享受した者たちは考えました。 この力によって新たな安定と、静けさと平和をもたらす事が私たちの使命である、と。 いつの世でも目的意識を持つことは大切なんですね。目標ができた彼らは精力的に活動しました。 まず、彼らは星のかけらの力を確固たるものとするべくための儀式に取りかかったのです。 ほとんど失われかけていた古の知識をかき集め、選ばれた鳥獣草木の生命力を星のかけらに注ぎ込みました。 これが緑の月の誕生です。そして緑の月を信仰する者たちがエルファの始まりです。

 緑の月を得たエルファたちは世界中に森を広げ、様々な動植物を住まわせました。 世界は緑に包まれ、次第に回復していったのです。
 エルファたちの哲学では世界は円環によりて構成されるもので、互いは複雑に絡み合い、支えあうものでした。 その円環を断ち切る事、歪める事は、邪悪な行いとされました。こうして、平穏で静かな平和な時代になりました。
 しかし、安定しているが故に変化のない世界、それは緩やかな衰退ではないのだろうか? と考える者たちがいたのも確かです。 彼らは円を描くのではなく、上へ横へと広がっていく螺旋の思想を持ちました。 ところがその思想が広がるよりも先に、ルナルの大地に大いなる災いがやってきてしまったのです……。

◆ 黒の月の時代 〜悪魔戦争の始まり〜
 ルナルにやってきた大いなる災いとは、黒の月――歪みの月とも呼ばれます――の誕生でした。 この月には〈悪魔〉と呼ばれるものたちが住んでおり、空にぽっかりとあいた穴のような歪みの月からルナルの大地へと侵攻してきたのです。 〈悪魔〉たちはルナルの大地を破壊し、そしてそこに暮らすあらゆる生き物たちを蹂躙していきました。 〈悪魔〉の最終目標は太陽、その先にある〈至高なる輝きの地〉。そのためにルナルの支配を目論んだのです。 ルナルに暮らす者たちは、もちろん抵抗するべく戦いました。こうして後に〈悪魔〉戦争と呼ばれる戦いが始まったのです。

 さて、ここで歪みの月がどうしてルナルの空に発生したのか、それを説明しておきましょう。
 結論から申しますと、歪みの月は一部のエルファたちの手によって生み出されたのです。 もちろん、エルファたちがこの結果を望んでいた訳ではありません。 彼らが望んでいた事は、ルナルの大地を緑豊かなものにするための、第2の緑の月の誕生でした。 1度目の時は星のかけらがありましたが、今度は元となるものが存在していなかったので、無から月を誕生させる必要がありました。 しかし、無から有を生み出すのはどこの世界でも難しい事のようです。彼らの計画は失敗に終わりました。 月を生み出す儀式に、世界に存在していた悪意――妬み、貪欲、憎しみなど――が干渉し、儀式を歪めてしまったのです。
 儀式を執り行ったエルファたちが全ての元凶とは言いきれません。 干渉してきた悪意はルナルの生き物の心に、多かれ少なかれあったのでしょうから。 エルファたちの儀式は、それらが歪みの月への扉を開くきっかけになったのに過ぎないのです。

 ルナルではごく限られた者たちがこの事実を知っています。 人間では高司祭クラスの人たちは知っているようです(もちろん人にもよりますが)。

 意図せず始まってしまった〈悪魔〉戦争ですが、あらゆる種族が〈悪魔〉にたちむかっていったものの、敵のその強大な力の前には無力でした。 各種族がばらばらに戦っていた事もありますし、彷徨いの月は気紛れにしか〈源人の子ら〉に力を授けてくれなかったのです。 また、強い力を持っていた〈龍〉や〈異貌の神〉は先の戦いで眠ったまま目覚める事がありませんでした。
 劣勢になりつつあるルナルの生き物たちの心が、〈悪魔〉が最も喜ぶ「絶望」の思いで満たされそうになったその時。 新たな月が飛来し、赤と青の二色の輝きがルナルの大地を照らしたのです――!

◆ 双子の月の時代 〜悪魔戦争の終結と人間の台頭〜
 青の月は秩序を、赤の月は解放を、〈悪魔〉に蹂躙されているルナルの大地にもたらしました。 この月に住まう神々は赤青で対になっているが故に双子の月と呼ばれています。 まず、人間たちが神として受け入れ、それに次いでドワーフたちが青の月のみを信仰しました。
 双子の月の神々はルナルの大地に〈見えない船〉を送り出し、そこから魔力――月からの〈波動〉――を供給し、呪文を操るすべを教えました。 それは今まで試みられていた、〈異貌の神〉や〈龍〉を目覚めさせるといった危険なものより、はるかに確実で安全な手段です。 新たな力を手にした人間たちの反撃が始まったのです。

 しかし双子の月の加護を受けつつも、戦いは長く続きました。 その中で数々の英雄と言える存在が現れました。その最たる者が、後に〈月に至りし〉サンダミオンと呼ばれる若者です。 彼は双子の月の神々に対面した最初の人間で、信仰するかわりに呪文や技能といった恩恵を授けてくれるよう、神々と契約をしたのだと伝わっています。 ギブ・アンド・テイク、とでも言いましょうか、解りやすい話ですね。 実益があるからこそ、教えに従おうという気になるものです。 ……それはともかく、彼は月から帰った後、ルナルに生きるあらゆる種族の先頭に立って戦いました。
 彼と共に戦った者として、〈癒しの姫〉ラレクラレナ、〈龍〉のキルシアン、〈最後の太陽の騎士〉テック・マーレン、 名も知られぬ二人の英雄――ウィザードの裏伝承では〈悪魔〉人間だとか――がいるという事です。 彼らは〈栄光の担い手〉とも呼ばれています。 もっとも、実際に彼ら全員が一緒に戦った訳ではないのですが。
 ※ ここではルナルに伝わっている一般的な説を述べてあります。

 〈悪魔〉戦争の最終局面は風さえ吹かぬ虚空での、双子の月の8大神と黒の月の8体の魔元帥との対決でした。 しかしその戦いがい如何なものであったのか、定命の者たちが知る事はできませんでした。 ただ、空を染め上げる七色の光と、それを喰らおうとする闇が見えただけだそうです。 その最終決戦は〈最後の7日間〉と呼ばれています。
 神々の戦いを直接見る事ができたのは、〈月に至りし〉サンダミオンだけ。 しかしながら、彼は〈最後の7日間〉の間に再び月へと昇ったきり、帰ってきませんでした。 だから結局は神々の戦いが如何なるものであったのかは判らずじまいです。
 戦いの後、〈悪魔〉は歪みの月へと押し込められ、双子の月の神々も月から波動を送るだけになりました。 ルナルの大地と月の間は、見えない網のようなもので遮られているといった感じです。 こうしてルナルの危機は去ったかのようになりました。 この戦いがルナルの民の勝利と言えるのかどうかは難しいところで、網の隙間からは小物の〈悪魔〉がやってきているのですから……。

 戦いが終わってからは各種族はそれぞれの土地へと戻っていきました。 双子の月を信奉し、この戦いでも中心になったせいか、人間族の国があちこちに広がっていきました(地域によって格差はありますが)。

 それから千年ほどの時が流れ、新たな歴史の幕開けです――。



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